10年前・浪速区

丁度10年程前になるだ
ろうか、僕は当時
訪問介護員などして
おり、色々なお宅へ
伺っていた。普段の
生活をしていると
入り込めないような
土地にも結構深く入ったりしていたっけ。自分の
周囲の世界とは違う世界が同じ国の中には幾らでも
あるのだなと思ったりしたのだっけ。懐かしいな。


今日はたまたまなのだけれども仕事でその界隈を
本当に久し振りに通ったのだった。晴れていても
何故か薄暗く、人気もなく語弊を承知で表現すれば
死んだような街だった。そこはかつて同和地区と
呼ばれていた。10年経って、時代やら何やらに変化が
あり、オンボロのショッピングセンターもどきは移転し、
崩れ落ちそうな市営住宅は(当時も建築が進んでいたけど)
美しい住宅に変身していた。当時関わっていた精神
障害を持った方が住んでいた住宅はまだあったが、
その方が今どうしているのかは当然だが知らない。
人権センターとかなんとかもどうも閉鎖しているらしい。
まあ、差別がどうのというより、要するに今の僕に
とっては「ああ、久し振りだな懐かしいな」という
不思議な想いに駆られたのであった。


湿度の高い気持ち悪い風が吹く中であったが、僕は
草ぼうぼうのちいさな公園の片隅に腰掛けてぼんやり
していた。この10年、結構頑張ったよな自分なりに。
経験したよな色々と。乗り越えて来たよなあれこれと。


電話が鳴った。国際がんセンターからだった。入院日時が
正式に決まった。6月26日(月)10時。4人部屋の空きがない
けど治療は27日開始なので暫く個室でよいかだと。良くない
けど治療を始めたいので了解した。色んな所へ行き、色んな
人に逢い、色んな想いを巡らせた。これからは自分自身の
身体と心に今まで以上に深く強く向かい合うのだ。10年前、
こんな事になるなんて想像してたかい、俺。


今日が休職前最終日だったけど、仕事が残っているので
明日許可を得て少しだけ出勤する。その方が気持ち的にも
いいと思った。
明日もいい日にしてみせますよ。ではまたね。