散り際

「自分にはあとどれ位の
時間が残っているの
ですか?」


まさかドラマの登場人物が
たまに口にする台詞の
ような事を自らが口に
する事になるとは思ってもみなかった。「再発」である。
しかも手術が不可能な場所だという。手術した所で僕の
身体には大きな影響が残るだけだろう。愕然として少しの間
アタマが真っ白になった。そしてやや落ち着いた所で口に
したのが冒頭の言葉だ。自分でも意外な程冷静に出た。


しかし主治医は余命については「今の段階ではまだそれは
判りません。ただ、治療としての手術は無理という事
だけです。放射線治療も限界に達している箇所なので
あとは抗がん剤と「オプシーボ」という最新の免疫療法に
繋いでみたいと思います」と。治験扱いなので申請して
みるらしい。


僕としては陽子や重粒子といった方法も聞きたかったが、
その医師はどうも詳しくはなさそうだ。ダメもとで
当たってみるつもりだ。諦めてはいないし、まだ早い。
今回同席した両親もかなり動揺していたが、冷静になるに
つれて何か他の道はないか一緒に考えようという事に
なった。そして、可能性に賭ける。どうせいずれは
人間なんて死んでしまうが、まだもう少しこの世にいたい。


職場のオーナーや先輩に帰社後この件について報告した。
驚いていたが、それは僕が冷静に淡々と話していたから
らしい。泣いてもわめいても何も変わらない。可能性が
あるのならそれを試して駄目ならそれまでだ。仕方ない。
とにかくこれまで通り治療を続けながら普通に仕事を
続けさせて貰える事になった。全面的に協力してくれると
いう。感謝である。あまり意識し過ぎないようにしたい。
まだ何も決まってはいないのだ。そして、自己免疫を
上げる為の生活なんてものもしてみようかなと。
まあ、明日からもこれまで通り生きるだけである。
ストレスを溜め過ぎないように、だな。好きなように・・・
まあ、どうにかなるさ。そう書いておこう。
でも、今夜は流石にくたくたです。皆さんは自分の
生き死になんて考えた事、ある?