次の街へと

そして迎えた実働
最終日。こうして
日記を書いていると
いう事はもう既に
帰宅して仕事も終えて
いる訳である。


不思議な感覚だ。終わったのだな、何時までも続きそうなしんどさ
だったが、気がつけば終わっていたのだった。雨降る中、淡々と
仕事をこなした。事業所内は今日もまるで戦場の様な慌しさで
皆動き回っている。僕もそんな中で頑張って来たが、今日でそれも
終わったのだ。


皆慌しく仕事をしていたが、僕の去り際には上司の一声で
皆一斉にこちらを向き、お疲れさま、と。いきなり花束と
プレゼントを頂いた。そんなもの要らないし貰える道理もない。
僕は勝手に辞めるのだ。でも厳しかった上司からも労いの
言葉を頂いた。彼は彼なりに僕をどうにかしたいと一所懸命
だったのだろう。それは僕も理解してはいたが、考え方や
価値観の違いから上手く行かなかったのだと今では認識して
いる。駄目な社会福祉士だったな僕は。もう少し強く心を
持てていたらまた違った事が出来たのかもしれない。少し
後悔したがもうそれにこだわる事に意味はない。
決めた事であり、そして決めた日が来たのである。皆さんに
心からのお礼を述べて事業所を去る。タイムカードを打刻した。


僕が本日実働最終日だと知っている他部署の職員さん達からも
声を掛けて頂いた。色々苦しい事も多かったし、社会福祉法人
いう立場上堅苦しさはどうしようもなかったが、それでも
3年近くこの法人に、そして包括に所属出来た事は僕にとって
かけがえのない経験となるだろう。これから時が経てば更に
そう感じるのだと思う。さようなら。振り向く事もなく
自転車を次の職場へと走らせた。実にありがたい事に、次に
所属する事業所の駐輪所に停めさせて貰える事になっているのだ。


結構距離があるが、明日からは休みなので気分はもう軽い。
今まで通っていた街を離れる。風景はどんどん変わり、知らない
街も通過する。雨は夕刻には止み、自転車を漕ぐには丁度よい
気温である。輝かしいかどうか知りもしないが、とにかく僕は
次の未来へと向かうのである。


おひとりさまおつかれさまパーティー(さ、さびしい・・・)と
称して美味しいものを食べようと思った。でも進路に現われるのは
ラーメン屋かファミレスか吉野家ばかり。じゃあファミレスに
するかとロイヤルホストに入った。

アンガス牛のステーキ丼だったかな。1800円位したな
リッチだぜ。丁度1週間前の日記で自転車でも飲酒運転に
なる云々かんぬんと書いたがビールが写っているではないか。
いやいやノンアルです。ほんとだってば信じてよう。いかに
普段呑んだくれてるかってかだな。それは兎も角1800円も
するような食い物、しかも胃がもたれるような気がするので
ステーキなんてそうそう口にしないが、意外に値段相応、
美味しかった。みょうがのお味噌汁もなかなかいけたっけ。
週末なのにガランとしたロイホでステーキ丼を食しつつ、
LINEでお疲れさま連絡が届いていたので返信した。いつぞや
悩み相談をして電話番号を教えて欲しいと嬉しい事を仰った
まだ若い女性だ。そして大変残念な事に人妻さんだ。その後
今更ながらと思いつつもLINEを始めたとの事。
なんかこんなんばっかだな俺。でも丁寧に返信しておいた。


ステーキ丼の余韻に浸りつつ更に自転車のペダルを漕ぐ。
どんどん風景が変わって行く。もうさっきまでいた勤め先は
遥か遠くである。そして次の勤め先に到着。自転車を停め
させて貰った。自転車には通勤用のカバンを前かごに。
仕事用のカバンをリアキャリアにゴムロープで括りつけて
走っていた。かなりの重さだったがそいつらを抱えて駅へと
向かい、電車で帰宅した。何だか旅から帰って来たかのような
心持ちだった。不思議な感覚だったな。


終わったのだな。そしてまた始まるのだな。落ち着きないな。
今は僕の人生の第何章になるのだろう。そんなタイトルの歌が
あったっけか。・・・あれ、あれ?おい!? 仕事用の携帯
持ち帰っちゃってるよ!!おいおい最後の最後にまたやらかし
ちまったぞ。もうやめてよーーー
上司に連絡し、明日朝速攻で返却する旨伝えたのは言うまでもない。
もう二度と立ち寄る事もないだろう、などと少し感傷的になっていた
矢先にこれかい。しゃあないのでGN(バイクです)を朝っぱらから
走らせる事にするか。でもまあ明日はもともとGNに乗って買い物に
出掛ける予定だったからいいんだけどね。


しかしオチはもうひとつあった。通勤カバンに放り込んでおいた
インスタントコーヒーを入れていたいちごジャムの小瓶の蓋が
外れており、カバンの中はコーヒーの粉まみれになってたとさ。
放り込んでいた書類やらなにやら皆コーヒーの粉まみれだわ。
何て最終回なのかしらん。そんな事だからロクな人生を送れ
ないのだ七転八倒なのだおひとりさまなのだとまた書いちゃうよ
まったく。

冬の嵐、春一番、その合間にふと、風が優しく吹いていた。
さよならの風だった。明日もいい日にしてみせますよ。
ではまたね。