顔の傷

海がみたい

帰宅時、電車に乗ると
気の毒な若い女性を
見た。


顔面半分にひどい傷を
負ってそれを特に
隠そうともせずしかし
少し髪をたらしていたので
あった。怪我をして
間もないのだろうか? いずれにせよ正視出来なかった。どんなに
コンプレックスになっているのだろうかと想像すると心が痛んだ。
若い女性の顔に傷である。彼女に何があったのだろうかと想いが
巡った。


ある駅で女子高生数人が乗り込んで来た。そのうち一人が彼女の
顔を見て思わず「うわっ!」と声を上げた。おいそんな事してやるなよ
このクソガキがと思った次の瞬間、ひどい傷の女性はククッと笑った。
そして彼女はこう言い放ったのであった。「これね、ハロウィンの
パーティーにこれから行くんで・・・云々かんぬん」そう、特殊メイク
だったのである。そう言われてみれば明らかに不自然だった。酷い傷なのに
目はしっかり開けてるしよくよく見たらつくりもん臭い。見ちゃいけないと
思っていたから解らなかったんだな。


微笑ましい事に女性と女子高生達はその後にこにこと談笑していた。
驚かせるような特殊メイクはどうかとも思ったが、ひょんな事から
ちょっとしたその場限りの交流が生まれた瞬間を垣間見た僕は
何だか妙に嬉しくなってしまった。そして、彼女の傷がニセモノで
良かったなあとも思ってしまった。バカみたいだが素直な気持ちだった。
幸せで愉しい人が羨ましく時に妬ましく思ってしまう悪い癖があるが、
今日はニセモノの傷で良かったなあと実に素直に思えたのであった。
少し疲れているのだろうか。いや結構疲れているよな。


明日はお休みですが事情からとあるイベントに個人的に参加します。
しんどい半分懐かしい方に会えるので嬉しい半分でございまする。
寝ます。明日もいい日にしてみせますよ。ではまたね。