「ありがとうね」 か・・・

今週も始まりました。


始まって早々心配
していた事が起こった。
先日入院された利用者
さんの体調が急変した
のだ。


病院からの連絡を受け、急ぎ出向いた。


利用者さんはかなり苦しんでおられた。医師からは先日のご本人の
希望を尊重して延命措置は行なわず、モルヒネ投与による緩和ケアを
行なう旨告げられた。しかしそれは最後の手段であり、その処置を
実施する事は事実上この利用者さんとのお別れを意味する事となる。


僕が病室を訪れた際、利用者さんの意識はまだ清明であり、どうにか
こうにか会話が可能であった。僕は恐らく、いや、間違いなく最期と
なるその方との会話を行なった。自らの死後行なって欲しい事を幾つか
語られた後、利用者さんはこう述べられ、手を差し出された。


「ありがとうね」


一瞬、僕は胸が張り裂けそうになったが、どうにか堪えた。
あくまでも冷静に振舞おうとした。そうするべきだと思った。
「よく頑張られましたね、本当に」そうとだけ、返した。
やがてモルヒネが効いたのか利用者さんは眠られた。時は僕が
訪れた真昼から夕刻へと移っていた。立場上、何時までも此処に
居る訳にはいかなかった僕は(それが悔しかった)、一先ず
苦しみから解放された利用者さんに最期のお別れを述べ、病室を
去った。看護師には動きがあれば僕が持っている緊急連絡用の
携帯電話に連絡をするようにお願いしておいた。連絡を貰っても
もう僕に出来る事は何もない。でも、そうしたかった。


ありがとうね、とは僕が本来云うべき言葉であったと思う。
その方の人生の最後の最後に関わらせて頂いた。不運にばかり
見舞われて来たにも関わらず「ありがとう」と云って逝ける
その人生の最後に。ありがとうね。