1999年・上富良野岳

一昨日の夜、僕は
或る酔っ払いからの
電話を受けた。


声の主は確か下戸の
筈だったが、声が
何となく酔って
上ずっていた。
懐かしい声だった。


その声の主の隣には、同じく僕にとって懐かしい人物が座って
いたらしく、これまた同じく懐かしい声が受話器から流れて来た。
二人はそれぞれ違う土地に住んでいる筈だったが、一人が仕事の
関係でもう一人の住む土地を訪れた事から再会していたらしい。
後方からは酒場の喧騒。楽しそうな人々の声が反響している。
彼らは思いつきで、休日の夜、明日の仕事の段取りをどうしよう
かと、うすぼんやりと考えていた僕に電話を掛けて来たのである。


もう13年も前の事になってしまうが、僕は当時北海道をふらふらと
バイクに乗って放浪していた事があった。情けない話だがその頃は
プータローで、これからどうやって生きて行こうかと悩んだり、
しかし一方ではどうにでもなれと何となく投げ遣りに生きていたりも
していた。旅に出る事でどうにかこうにか精神的な均衡を保って
いたのだと思う。


彼等には、そんな頃に出逢った。偶然が運命的なるものに変わる
瞬間を体感した日々。僕は上富良野の町で彼等と共にひと月を
過ごした。お互い過干渉を避けつつも、しかし思いつくと、深く
共に行動していた。若気の至りで馬鹿馬鹿しい行動も多かったが、
或る経験から馴れ合いが大の苦手になってしまい、極端な個人主義
から来る孤立を常としていた僕にとっては(この傾向は今も何となく
残ってしまっている。どうにかしなければと思いながらも)こんなにも
心を開いて付き合えた奴らも他にいなかったかもしれない。



彼等の中では、僕はまだ無茶苦茶な生き方をしていて(?)
一般大衆以下の連中が価格面からチョイスしていた安タバコ
たる「エコー」を愛煙している(いや、タバコやめてもう8年に
なるんだってば)事になっているらしい。もう笑うしかない。
そして、彼等の中で、この僕は時が止まっているような存在と
して受け入れて貰えた事が、本当に嬉しかった。

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この日記にコメントをくれていた中で、僕の素性をそれなりに
知っている方々は、皆さん元はと云えば旅先で出逢った方々であった。
東日本大震災を期に連絡してくれた宮城県のレイド氏、
沖縄で出会い、北海道で再会したMヤン氏、お互い大阪出身
なのに何故か東北の山奥で出会って近年もコメントを下さる
8DR氏。皆さん、それぞれがそれぞれの生き方でこんな厳しい
時代と状況の中頑張って生きている。


皆さん、ありがとう。そして、どうかよき日々がそれぞれの人生に
訪れますように。こんな時代ではありますが、きっと光は何処かに
あると信じて。


明日もいい日にしてみせますよ。ではまたね。