坂道の想い出
まだ6月なのにいきなり
梅雨が明けたような
1日だった。
路地は坂道となっており、
風を切って下って行くと、
何処からともなく蚊取り
線香の香り。
夕刻の路地では子供達が
走り廻り、ネコが暑そうにのびていた。
もう何日か経ったらどうせまた雨だろうと思っていたが、
もう暫くは晴れてくれそうな感じである、しかし何とも暑い。
下手したら7月に入ってすぐに梅雨明けしちまったりして?
気の早い蝉が、そろそろ鳴き出しそうな勢いだねこりゃ。
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5年前の秋、下町から週に2〜3回、車椅子を押して天王寺の某所まで
出る仕事をしていた事があった。都合3年ほど続いた。夏の暑い盛りも、
冬の寒風吹きすさぶ中でも。事情が色々とあり、利用者さんを乗せた
車椅子を、延々と続く坂道を上り、そして下りていた。
これは体力的にだけでなく、ある意味精神的にもかなり消耗した
仕事だった(極めて様々な問題を抱えておられた方だったから)。
よくもまあやれていたと思う。歩き過ぎで膝を痛めたりも
したっけか。夏はクロンボになるまで焼けて、何度か熱中症に
なりかけた。もうあれは出来ない、やるべきでもない。
しかし今となっては懐かしさすら感じる想い出である。
その利用者さんとの関わりに於いて、僕は精神を病んだ方々と
どう接すれば良いのかを自分なりに考え、実践していた。
今になって思えば極めて未熟なものであったかもしれないが、
僕なりに必死に考え、関わっていた。
関わったけれども、最後はあっけなかった。気が、抜けた。
僕は何をやっていたのだろうかと脱力感のみが残った。
懸命に関わったけれども、あっけなかった。
考えても、その通りに行かない事は多い。いや、人生なんて
そんな事の連続だ、もしも思う通りに行っていれば、こんなおかしな
業界でどうにか頑張ろうなんて、それこそ思いもしなかっただろう。
坂道を上っていた。もうあんな事は出来ないなあと思うが、
上っていた頃が何となく懐かしい。
なかなか上り坂の人生とは行かないか。
駄目だ眠い。とっとと寝ます。明日もいい日にしてみせますよ。ではまたね。