根無し草

入梅前の下町で

何ていう名前の花
なのか知らない。


花の名前なんてあまり
興味は無い。知らない。


でも、下町の片隅で
逞しく地面を割って
茎を伸ばし、小さく
咲いた花はなんて
きれいなんだろう。


花を愛でるなんて高尚(かな?)な趣味はないけれど、おおああ
ここに咲いているなあきれいだなあと心に留める事はよくある。
桜が好きで先月は毎日桜の写真を載せたりもしたけれど、
華やかさではまるで叶わないこんなひっそりとした花も大好きだ。


こいつは何処から飛んできて、何時ここに根を下ろしたのだろうか。
コンクリートの割れ目から、僅かな土と水分を糧に伸び、咲いた。
こいつの命は短いが、僅かとは云え土に根を張ったのだ。
根無し草ではない。


逞しいこいつより、僕の方がよっぽど根無し草。
何も確かさを感じられぬままこんな所にまで来てしまった。
立ち位置やら末路やらを何となく考えなくてはならないので
あろう世代とやらに少しずつ脚を突っ込んで行く事になる
筈なのに。


名前まで知ろうとは思わない。名前を知ったところで
どうだって云うのだ。こいつは生きている。それで充分。
こいつのように生きられたらいいなあとふと想う、それで充分。
想うだけでも、きっと充分。


明日は晴れるか。でも、雨の季節が迫っている。
寝ます。明日もいい日にしてみせますよ。ではまたね。