もうひと息


降り続いていた雨は
夕刻には漸く止んだ。


冬のような寒さは
変わらず、街では
ダウンジャケットを
着ている人もまだいた。
今日に限ってはそれも
正解だったかもね。


街角の桜の木。ぽつんと一本だけ植えられている、僕にとって
ちょっとした目印のような桜の木。蕾と、小さな花びらが
つめたい雨に濡れている。この寒さが過ぎれば、満開までは
もうひと息。 吐いた息が白い。白い息が、桜の木に向けて飛んだ。
もう、ひと息だ。

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一昨日から本格的に作成し始めた研修課題のひとつたる社会資源調査票。
そのデータはUSBメモリースティックに落として事業所に持って行っている。
昼休みに少しずつ入力してみたりもしてみたり。少しずつだが進んでいる。
大体それらしき事をそれらしく記入すれば良いのだと思う。多分。
キーボード入力なのでサクサク進む。体裁さえ整えればいいだろう。


こんな具合で居宅サービス計画まで作成しようと思っている訳である。
実にザツである。大雑把にも程がある。大体それらしき事を、それらしく
記入しちまおうかなんて考えている男である。我が事ながら、僕は
ケアマネには向いていないのではないかと思わないでもなかった。


利用者さんの事、ほんとに真剣に考えてる? 俺。


疲れている。惰性に走るか、しかし尚突き詰めるか、実は悩んでいる。
悩んでいる方々、困っている方々を日々相手に仕事をしている。
桜が咲いて、咲いたかと思ったら一気に散るかの如き物凄い変化の中で。


悩んでいる。僕の仕事の仕方は、根本から間違っているのかもしれない。
一所懸命走って来たつもりではいたが。


でも、走る事はもう止められない。もう帰り道なんてないのだ。
行ける所まで行くしかない。もうそれしかない。厚労省の役人どもが
介護保険創設の際に言い訳がましく述べた「今後制度をどうするかは
走りながら考える・・・云々」の戯言を、情けなくも今僕は甘受
せざるを得ないのか。


利用者さんの事、ほんとに真剣に考えてる? 俺。


寝ます。明日もいい日にしてみせますよ。それでもね。ではまたね。