哀愁の夜鳴きそば


日没後、移動中の
僕の前に現れた
夜鳴きそばの屋台。


♪ちゃらり〜らら
 ちゃらりらりら〜


チャルメラで無く
録音テープではあるが、
何処か懐かしく、何処か侘びしく、何処か美味しそうな不思議な音が
夕暮れの町に鳴り響く。


夜鳴きそばかぁ、僕が小学生の頃住んでいた町にも、夜になると
こんな屋台がやって来たのを憶えているぞ。来るのが待ち遠しくてね。
窓から首を出して匂いを嗅ぐ訳だ。これがまた美味しそうな匂いを
撒き散らしておるのだね。


「食べたいなぁ」「駄目です!あんな不衛生なもの!」


テレビドラマ等で(刑事ものなんかが多かったような)屋台のラーメンを
食べているシーンを観ると、何だか羨ましかった。おでん屋台もまたしかり。
あれが出来れば大人だぜ、と思ったりなんかして。


僕が屋台のラーメンを初めて口にしたのはそれからかなり経った23歳の頃。
真夜中の徳島港フェリーターミナルにて。


その時僕は剣山スーパー林道と云う日本最長のダートを走りたくて
四国へと渡っていたんだ。林道は徳島県から高知県に抜ける長大な
ルートでね、山から駆け降りて来た様に辿り着いた高知では、
はりまや橋と竜馬の銅像を見て、四国カルストなんかも見て・・・
結局四国をぐるりと廻ったんだっけ。


時間があまり無かった。就職して初めてのゴールデンウィーク
利用しての旅だったから。社会人に使える時間は限られていたのだ。
愛媛で日没を迎え、夜遅くに出る徳島発大阪行きのフェリーに
乗る為にひたすら走ったっけ。何処かの峠、何処かの国道沿いの
ラーメン屋でキムチ乗せ放題の、しかしあんまり美味しくなかった
ラーメンを夕食として、寒い中眠い中徳島目指してひたすら走ったっけ。


フェリーの出港時間には間に合わなかった(22時頃だったかなぁ?)。
ギリギリで間に合わなかった。東京行きの船が就く港と、大阪行きの船が
就く港とを間違えてしまったんだ。僕が大阪行きの港に着いた時には、
汽笛の音と共に大阪行きフェリーが出港した後だった。僕が一気に脱力
したのは云うまでも無い。


次の大阪行きは午前3時頃だったかな、時間がありすぎてどうしたものかと。
フェリー乗り場の待合室ゲームコーナーで、その時点でもう既に懐かしかった
パックマン」をやってみたり、用も無くうろうろしてみたりと過ごす。
それでもまだ時間が余っている。お腹も空いて来た。


♪ちゃらり〜らら ちゃらりらりら〜


あ、夜鳴きそば。待合室を出てボーッとしたアタマで屋台に近寄った。
「おじさん、ラーメン」「はいよ」会話はこれだけ。


客は僕一人。周囲に人気が無いので、こんな所で商売になるのかどうか
余計なお世話ながら心配しちまったんだっけ。一杯500円也。
夜中、屋台、一人、旅先、フェリーターミナル、寒さ・・・etc 
そのようなごった煮シチュエーションが薬味となったのかもしれないが、
その屋台のラーメンは本当に美味しかった。前述の峠のラーメン屋の
それよりも遥かに美味しかった。


そんな想い出が、一気に蘇ってしまった今夕の哀愁の夜鳴きそば屋台。
後ろから、すんません勝手に一枚撮らせて貰っちゃいました。


「食べたいなぁ」「そうねえ、もうすっかり夜鳴きそば見かけなく
なったもんねえ」


会話の内容も変わった。時代も変わった。でも、変わらずの夜鳴きそばがいた。
たったこれだけの事。でも、意外な方向に話ってのは進んだりするもんですな。

_____________________


今日から10月ですね。秋雨前線が停滞しているとの事。
明日も雨かな・・・?


急速に眠くなって来ましたがな。でも、少しだけ問題集に目を通して
おきましょうか?いやそうしておこう。あ、うたた寝しちまった・・・
少しだけでも。


眠いです。明日もいい日にしてみせますよ。ではまたね・・・