虫の知らせ

ひっそりと、不動明王。

帰宅して暫くすると、
日が変わってしまった。


残業では無く、
お通夜に参列して
来たのだった。


参列、と云っても、
集まったのは
僅かに5人だった。



今朝、うちのとある利用者さんが亡くなった。最近体調不良を訴えて
いたらしいが、ケアマネも訪問看護も全てに於いて対応が後手後手に
なっていたようで、結果的に手遅れになったのだった。


その方は(西成ならではの)独居で生活保護を受けている方だった。
穏やかな方で、ヘルパーさんから好かれていた。身寄りは全く無い。


僕自身はと云えば、2年前まではレギュラーでサービスに入っていたので
あるが、スケジュールの都合から離れてしまった方だった。サ責となった
今でも、僕の担当では無いので近況はほとんど知らなかった為、突然の
訃報には大層狼狽した。そんなに弱っていたのか・・・


日没後、仕事を終えた足で主任と、担当ヘルパーさん、たまたま事業所に
遊びに来ていた、かつてうちで働いていた方、そして僕とで通夜に出掛ける。
ヘルパーさんが、昔その方を担当していたケアマネさんに思いついて連絡を
取ると、ケアマネさんは休みにも関わらず、わざわざ駆けつけて下さった。


その5人。たったの5人。


利用者さんの亡骸の元へ。大層穏やかな表情だった。苦しかった
だろうに。でも、本当に安らかな死に顔だった。全てから解き
放たれたからなのだろうか。


生活保護の独居者を葬る為の、極めて簡素な設備の中、5人であれこれ
話し合う。ああだったね、こうだったね・・・   僕等はまたひとり、
見送るのか。


その後、ファミレスに場を移して簡単な食事を摂りながら各自の近況や、
今後の目標等、あれこれと話し合う。久々に有意義な時間だった。
で、帰宅が遅くなったと云う訳だ。


さて、亡くなったその利用者さんを現在担当しているケアマネと、
しょっちゅう出入りしている訪問看護事業者は・・・そう、何かと
理由を付けて、来なかった。色々と事情は有るのかもしれない。
しかし此処で敢えて暴言を吐かせて頂く。


「この、役立たずどもが!!!」


仕事に手抜きが見られたのは誰の目にも明らかなのだ。せめてこの場
にてだけでも吐かせて頂きたい。もしもこの方に御家族がおられたならば、
彼等の対応は違うものになっていたかもしれないと思うと、正直虫唾が
湧く。せめて少しだけでも、顔を出して欲しかった。たった5人しにか
見送られないなんて・・・

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不思議だなあと思っている事が有る。


つい数日前の事だ。僕はこの利用者さんの元を、ちょっとした用事で
実に1年振りに訪問している。本当に些細な、偶発的に発生した用事でだ。


「こんちわー××さん、j-45です。僕の事憶えてます? 今日は
 かくかくしかじかの用事で来たんだけどねぇ・・・」


「あはぁ、うぅーん、憶えてるよぉ・・・・」


僕の様な者でも、かつて関わっていた事を憶えていてくれた。
最期に、挨拶として呼び寄せて下さったのであろうか?
所詮只の偶然でしか無いのだが、ふとそんな考えが頭を掠めた。


集まった5人は、心を込めて見送った。考えてみれば西成には
只1人にすら見送られずに、処理されるが如く葬られる人間が
ゴロゴロしているのだ。5人に見送られたのは、せめてもの救いだと
無理からにでも思ってみたい。

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忙しい1週間だった。しかしどうにか乗り切れたとは思う。
週明けは月次報告書を一気にまとめなくてはならない。
来週以降も、暫くは大変かもしれない。


ひたむきに頑張ろうぜ、結局はそれしか無いのだ。


明日もいい日にしてみせますよ。おやすみなさいませ。