うまか一日

1997年・林道日本一周

1997年10月28日火曜日。
林道日本一周の旅。


ここは九州。実は
正確な場所が把握
出来ないままなので
あるが、おそらくは
宮崎県東臼杵郡北郷村
県道210号線脇にある
展望台のある広場。


この前日は、高千穂五ヶ瀬から県境を越え熊本県上益城郡矢部村へ。
源平の合戦、壇ノ浦の戦いにて敗退した小松内大臣重盛がこの地に
落ち延びた事が地名の由来となっている内大臣の地を目指す。
その界隈は、急峻な山腹に集落が点在しており、よくもまあこんな
辺鄙な地に居を構えたものだと、ある意味感心してしまった。


九州を代表するダートコースを駆け抜ける。内大臣林道から椎葉林道へ。
標高1280mの椎矢峠を越えれば、熊本県から再び宮崎県へ戻る。
峠は寒風が吹き荒び、非常に寒かった。しかし良くしたもので、
荒れた路面の状況に細心の注意を払いながらジェベルを操縦
している間は、寒さなど一切感じなかった。燃えてるねえ。


アプローチルートの全面通行止めに遭い、数本の林道をキャンセル
せねばならなかったものの「単位面積あたり林道のパーセンテージが
日本一の村(と、昭文社ツーリングマップル九州編初版のガイドにある)
東臼杵郡諸塚村の林道を思う存分走る事が出来、結構満足する。


そして見つけた写真の野宿地へ。尾根沿いのこの展望広場、
訪れる人はおよそ無く、誰とも逢わなかった。遥かな山並みを
遠望し、遥か眼下には集落が点在している。絶景だ。
17時、集落よりサイレンの音が響き渡る。風がとても冷たい。
この地には、間も無く冬が訪れるのか。


この野宿地より数kmの場所には、九州最大級の村営天文台で、
標高902mの中小屋山の頂上直下にある「中小屋天文台」がある。



最大級と謳う割りには小さいなあ、でもこのようなものが
ある位だ、星空の美しさは筆舌に尽くし難い。
全天に跨り渡る天の川を見た想い出は、一生忘れないだろう。
旅に出て、本当に良かった。本当に。


翌日この写真を撮影した朝、起床した僕が最初に行った事は、
テント内の換気に留意しつつ、ピークワンガソリンストーブを、
暖を取る為に着火させた事だった。この旅始まって以来の
猛烈な寒波に襲われた朝だった。しかし、凛とした空気の中、
風景は全て輝き、全て澄み切っていた。これから山を下り、
日南海岸を目指す。九州最南端佐多岬までは、もうそう遠くない。


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