バス問答

帰りのバスにて

疲れ果てたような
人々が、バスに揺られ。


わたくしも
疲れましたぜ。
果ててはいないが。



一番後ろの席を
ブンどった。
写真なんぞ撮る。アホだ。相変わらず。


金曜日最後のサービスは、ある利用者さんを、ある場所へバスで
送り届ける、という内容。車椅子に乗った方だ。大阪市営の通称
赤バス」と呼ばれる100円で乗れる赤い小型バスで移動する
予定であったのだが、そのバスには、間の悪い事に、電動車椅子
先客が。やむを得ず、通常の市バスに乗るべく、少し離れた市バスの
バス停へ。車椅子対応型のバスが丁度来るので、暫し待つ。


春のような暖かい夕刻。日が長くなった。17時。ひと月前なら
もう真っ暗だったっけか。そういや、気付けばもう節分が近い。
恵方巻を丸々1本食べるの、ちょっと出来そうにないなあ、などと
どうでもよいような事をぼんやりと想う。バスが、来た。


ノン・ステップバス。車椅子の人も利用出来るように工夫されている。
バスを使った移動介助も、もうすっかり慣れた。これは乗り口から
まるでベロ(妖怪人間じゃないよ、って古っ)のようにスロープが
引っ張りだされる仕掛けになっている。ところが、だ。運転手さんが
スロープを車体から力任せに引っ張ると、「ドン!!」という音を
響かせて、スロープが車体から落っこちた!おもいっきり壊れた!


整備不良。運行前点検不良。


バスは、いきなり運行不能となり、他の乗客は降ろされる羽目に。
「あんたらが乗りさえしなければ!」という視線をズビズバと
僕らに呉れながら、乗客の皆様は次のバスを待たされるという事態に。
悪いのは、整備不良と運行前点検不良なのによお・・・と嘆いても
始まらない。悪いのは、僕らなのであるらしい。悪く無いのに、
ひたすらアタマを下げた。なんで、こうなるの?


でも、考えてみたら、そういうものなのかもしれない。
バリアフリーがどうのとか言った所で、まだまだ障害者に
対する世の中の認識なんていい加減なものだ。それは、
どうにも仕方無いものと思われる。正直、この業界で仕事を
していなければ、この僕だって避けるよ、障害者。
だって解らないんだもの。知ったこっちゃないんだもの。
でも、僕は知った。知ったからには、どうにかしたい。
僕は弱者の味方です。ああ味方なのです。


嘘つけ、このやろう。せめて偽善者くらいにはなりたいわあ。

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「あー、ほんますんまへん!兄ちゃん!ほんま悪いねぇ」


運転手さんが無知で素朴で余地だらけそうな感じのおじさんだったから、
なんにも言えなくなった。妙にいい人そうなんだもの。
もっとササクレ立った陰険そうなオヤジなら、喧嘩のし甲斐も
あったのだろうけど。拍子抜けして。こんなもんなのかなあ、
世の中の認識は。そうかこんなものなのか・・・


僕も、バスに乗って帰る。疲れ果てたような人々が重く乗るバスで。
僕は、まだ果ててはいませんがね。果ててたまるかってんだ。


寝る。明日もいい日にしてみせますよ。
たまるかってんだこのやろう。おやーすみ。