人の世は変わらず

雨が運んできた憂鬱

今日も一日雨。


妙に憂鬱だった。どうもこういう日は駄目だ。
緊張が途切れると更に良くないので、どうにか
適度に緊張状態を維持するよう心掛けていたら、
それは実は適度でなかったとみえて、すっかり
疲れてしまった。あほらし。

_______________________________


今読んでいる「坊っちゃん」の話中に、こんな
箇所があった。主人公は、「赤シャツ」と
渾名した、狡猾さを覗かせる教頭との会話の後、
このように思う。以下に引用を。

「赤シャツはホホホホと笑った。別段おれは笑われる
ような事を云った覚えはない。今日ただ今に至るまで
これでいいと堅く信じている。考えてみると世間の
大部分の人はわるくなる事を奨励しているように思う。
わるくならなければ社会に成功はしないものと信じて
いるらしい。たまに正直な純粋な人を見ると、坊っちゃん
だの小僧だのと難癖をつけて軽蔑する。それじゃ小学校や
中学校で嘘をつくな、正直にしろと倫理の先生が教えない
方がいい。いっそ思い切って学校で嘘をつく法とか、人を
信じない術とか、人を乗せる策を教授する方が、世の
ためにも当人のためにもなるだろう。赤シャツがホホホホと
笑ったのはおれの単純なのを笑ったのだ。単純や真率が
笑われる世の中じゃ仕様がない。清(キヨ:主人公の
実家に居た下女)はこんな時に決して笑った事はない。
大いに感心して聞いたもんだ。清の方が赤シャツ
よりよっぽど上等だ」

長く引用しちまったな、おい。でも、この部分、好きだ。
漱石は23歳の主人公の声を借りて、大人じゃ声高に言えない
「青臭い」とされてしまう意見を叫んだのか。


巻末の年表によるとこの「坊っちゃん」は漱石が39歳の時、
明治39年4月に発表された、とある。西暦で云えば1906年
何と!もう間も無くで発表から丸100年じゃないか!!!
僕は随分タイムリーにこの作品に再会したのであるな。


一世紀も昔の世界でも、変わらぬは人の世か。
時の流れの中で変わっていくもの、変わらぬもの、
そして変わりようのないもの・・・なんぞあれやこれやに
思いを馳せつつ、明日からも通勤・帰宅の電車内での
小さなオタノシミとして。


疲れた。寝る。
明日もいい日にしてみせますよ。おやすみなさい。