避難所

雨宿り

兆しは既にある



駅前は何故か森の匂いがした



雨の貧民街に人気は無く
僅かにガード下に雨宿りする
およそ切実な用事とは縁の無い
男達が呆然と佇むのみか



懐かしいゼリー菓子のような
インチキなシャンデリアを飾る
ガラス玉のような雨粒を滴らせ
浅黒い塊が暫く先に落ちている



蹴飛ばせばそれなりに動くのであろう
その塊には 雨除けなどという無粋な
ものは要らないようだし 訪れる恒温動物
としての機能停止をも既に自覚の範疇にあるようだ



朝4時からセンター前で売られているという
安売り煙草の吸殻を指で弾いたつまらなそうな男は
空を見て舌打ちしたずぶ濡れの僕をわざわざ確認すると
ククと笑いながら頷いた



屠殺についてのいくつかの情報
特殊地域とされる地区の利権と内情
圧力団体としての辻褄合わせの限界
聞くともなく聞いた雨音と隠れ話



格差は生まれたのではない
社会は形成されているのではない
道徳は破壊してもし尽くせない
馬鹿は死んでも治らない



失念を恐れる
だから研ぎ澄ませる
解放を恐れる
だから固執する 簡単だ



どうあろうと変化を拒む者達には
仕組みなんて関係ないものらしい
懸念なんておよそ野暮なものらしい
時間なんて煮汁粕みたいなものらしい



川崎の街を突然想い出す
多摩川沿い 競争馬の練習場
モツ煮を売る下町の情景
10年前の雨のあの日



脈略に頼る必要など皆無となる
思考は 実は漂わせておくもの
ある日雷鳴または怒号のような音圧と共に
次に何をするべきかが発現する







友愛を常とするは雨ざらしの 仮の住まい



聖なるかな かの人生

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大変失礼しました。

明日もいい日にしてみせますよ。