複雑であること

夏か秋か

僕がヘルパーとなって最初期からの付き合いである、
糖尿病の利用者さんのお宅に、いつものように伺う。
この人、糖尿病のくせに酒飲みなのだ。


最近、もうどうせ自分は治らないのだからと、
ヤケになり、やたら呑んでいる。


今日も今日とて、ワンカップを7本も呑んで
へろんへろんになっていた。


「ねえ、××さん、インシュリン注射しようよ」


「うるせえ!! いらんわ!! 帰れや!!!」


こんなやりとりがしばし続く。



ああそうかい。俺もね、そんなに優しい男じゃねーんだよ。


「ねえ、いい加減にしなよ、グダグダ言って俺を怒らせんなよ」


「うるせえ!」


「・・・うるせえじゃねえだろ!!!!ガタガタ言ってねえで起きろ!!!」

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やっちまった・・・orz

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でも、この人の場合、これで良かったのだ。
今までの付き合いの中で解っている。
言う時はバシッと言ってやらなきゃならない人なのだ。
言ったら急にシュンとして、

「スマン、俺ァ酔ってんだ・・・」


「ねえ、××さん、俺も酒呑みだから気持ちは解るよ、
糖尿病でも適量(ワンカップなら1本くらいかなあ?)なら
呑んでもいいらしいし。要は呑みすぎがいかんのよ・・・
抗酒剤飲んでるんでしょ?少しずつ減らしていこうよ」

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「お前ガキのくせに(って僕は33歳なんですが)相当根性座ってるな」だとさ。
こんな臆病者のヘタレつかまえてよく言うよ・・・


××さんは、それまであんまり話してくれなかった過去の事を
ボソボソと話してくれた。


友人に、連合赤軍のメンバーがいたらしくて、実名を挙げ、
ピース缶爆弾をこしらえて爆発させ、9年の懲役食らって、
その後ペルーで殺された、なんて話とか。どうやら実話らしい。


あいりん地区で、労働運動をしてるちょっとヤバイ立場の人と
仲が良かったんだ、とか。


僕が担当していて、××さんも知ってる、とある利用者さんを評して、
「アイツは極道のくせして組もまとめられんで今じゃヘロヘロじゃあ」
なんてクダ巻いたりとか。その利用者さんは、しわくちゃの身体に
しぼんだ刺青がみじめな、これまた問題多しな方で・・・


ひとしきり喋ったら、すっかり調子を取り戻したらしく、
生活保護でも嫁さん貰えるかの?」なんて話を。
何をぬかすかこのオッサンは(笑)。


××さんの出身は青森県
どうも大阪万博の頃にこっちに労働者として来て、
そのまま居ついたらしい。あいりん地区住人ではないけれど
(まあ、結局西成の人なんだけどね)、地区には出入りしてる。


時代の影の部分には、地方から夢を追って、しかし潰れていった
人々の声無き声が・・・

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改めて、思った。


僕の仕事は、様々な生きるカタチを垣間見るものなのだと。


寝る。まだガキであるらしいオッサン候補生は早々と寝る。
ああそう、少しだけギター弾こう(なんだよいきなり?)。


我が愛器J-45は、もう正月から(だったかな?)弦を張り替えず、
チューニングも半音落としたままなのだけれども、
しかし結構いい音で鳴ってくれるのだ。


左手中指の痛みはなかなか消えてくれず、少し押さえにくい
コードもあるのだけれど、しかし弾いてみたい気分なのだ。


ところで、今日起こった出来事って、歌に出来るのかなあ?
面白いから歌にしても。


いや、ちと生々しいか・・・


愛猫もすこーし体調戻ってきたみたいだし、ひとまず
安心して寝ますです。おやすみ。なんなんだよそれ。


じゃ、シンプルに。


明日もいい日にしてみせますよ。