つい先日、神戸の居宅支援事業所と訪問介護事業所で起きた虐待事件に
ついて知り、その事について自分なりにまとめて書いてみようと考えた。


ケアマネが関与した事件として、場合によっては他人事ではないと
認識したのでその事件についての概要を以下に記述しておく。僕なりの
視点からその問題点と対応策について簡単に述べてみたい。


「訪問介護先の玄関に鍵は虐待」で処分


神戸市在住の認知症を患っているご夫婦の担当ケアマネジャーと
訪問介護事業所のヘルパーが中心となって(記事ではそうなって
いる。ケアマネの所属する大手企業のTOPは、自分達は研修等をきちんと
実施し、以前から対策を行なっていたと主張しているのであろう書面を
公表している)頻繁に徘徊行動をしているこのご夫婦の危険回避の
方策として、玄関に外からチェーンロックを掛けて外出出来ない様に
していたというのだ。それも約4ヶ月にも渡って。勿論ヘルパーや
ケアマネの訪問時には施錠は介助され、ヘルパーのケアは継続されて
いたそうではあるが。


問題点は当のケアマネや訪問介護事業所がチェーンロックを玄関に
掛けてしまう事を所謂「身体拘束」であるとの認識を全く持って
いなかった事に尽きる。身体拘束は云うまでもなく虐待であるが、
彼等は「外出すると転倒したり事故に遭う危険などがあったりした」と
考えていたそうである。周辺住民からの苦情や申し出もあったのかも
しれず、やむにやまれぬと行なった事なのかもしれないが、あまりにも
思慮が足りなかったのではないか。


更に問題なのはケアマネも訪問介護事業所も、組織上部や公的機関に
まるで相談を持ちかけていなかったと云う点である。
困難であると認識したケースであるならば、兎に角公的機関に
相談を持ちかけるべきだったのではないか。地域包括支援センター
介護保険課、このご夫婦が仮に生活保護を受給されていたのであれば
福祉課のケースワーカーへと現状を(即座に解決策が生まれる訳では
なくとも)相談し、記録を残しておいて貰うべきであった。つまり
公の場に問題を提示する事、そして記録を残しておいて貰う事は
個人たるケアマネや、いち事業所の持つ力の限界とそれに伴う
リスクを分散させる事に繋がってゆく。


公的機関に相談を持ちかけたからすぐに解決に向かうとは僕も
流石に思えない。むしろ場合によっては堂々巡りや無駄の積み重ねに
なりかねない時だって確かにある。でも、この様な案件に真っ向から
対するには、ケアマネやいち事業所ではあまりに無力である事は
冷静に考えれば判断出来るのではないか。そして対応へのまずさが
露見した際のリスクはあまりにも大き過ぎる。その実例が今回の
事件ではないだろうか。当該事業所は今年8月から半年の営業停止
処分となっている。その長さとなると事実上業務を停止せざるを
得ない事となるかもしれない。このケアマネは恐らくもう仕事を
辞めざるを得ないであろうし、それより何より信頼してケアを
依頼していたかもしれない当のご夫婦やそのご家族に結果的に
多大な迷惑を被る事となってしまったのだ。


在宅でケアを継続するには限界があるが、施設への移行が
出来ない事例は沢山存在する。その際に在宅にこだわるあまり、
若しくは施設への移行への(受け入りキャパの少なさから来る)
困難さを必要以上に考え過ぎて無理に在宅に留めているケースは
確かにあると思う。でもケアマネや訪問介護事業所は、その
困難を抱え込んではならない。先述した様に、たとえ話が前進
しなくとも公的機関に相談を持ち込み、相談記録を残して貰い、
尚且つ自らも支援経過記録として残しておくべきであると思う。


今回の事件で、当該組織の経営陣は「独断で判断してしまった
ケアマネジャーを含めて、今後は研修を重ねて再発防止に
取り組みたい」と述べているそうである。完全に責任は
個人にあると主張している・・・様に感じてしまった。
組織のTOPは末端なんて守ってはくれはしない。それは
別にこの業界に限った事ではないだろう。自分の身は
結局自分で守るしかなく、しかし誤魔化しではないきちんと
した主張であれば、そしてそれが周囲に熱意として伝わって
いるのであれば、その主張は通る、と信じたい。


何だか長くなってしまった。こりゃいかん。
取り敢えず寝ます。明日もいい日にしてみせますよ。
ではまたね。