Zepp Osaka



3月11日(木)
Zepp Osaka
21時過ぎ。


家路につく人々。


皆、それぞれの
想いを胸に。


ボブ・ディラン来日公演の初日は、何といきなりの追加公演となった。
プラチナチケット化したと聞き、入手は一時諦めていたのだけれども、
幸いな事にこの追加公演のチケットを僕は入手出来た。待ちに待った
日だった。


18時2分、あれやこれやと理由をつけて僕はタイムカードをとっとと押し、
電車に飛び乗った。開場は18時。もう開いている。僕が取れたチケットは
スタンディングとなるので、出来るだけ早く行きたかった。


会場最寄りの駅は僕の地元からそんなに離れていないコスモスクエア駅
駅近くにはコンビニがあり、そこでパンを買って齧りながらZeppへと向かう。
僕と同様ディランに逢いに来た人々がぞろぞろと歩いている。
吹く風はつめたい。大阪港の夜景が綺麗だ。


Zepp Osaka前には18時40分にはどうにか到着。記念グッズ(おいおい)を
販売している出店があった。アホらしいとは思いつつ、僕は記念ポスターを
購入してしまつた・・・笑ってくれ。


カメラの持ち込みは当然禁止。しかし携帯電話は何故かOKとの事。カバンと
ポスターが邪魔になるので、入口前のコインロッカーに預けて入場とする。
会場内ではお酒や軽食が販売されている。ビール片手ににこにこしている
女の子などおり、なかなか和やかな雰囲気。しかしやはりごった返している。
開演は19時。もう間もなくだ。


会場内に入る。もう人でいっぱい。座席のある2階席を見ると、最前列
ど真ん中に、菅野ヘッケル氏(ディランの歌詞の和訳やアルバム解説等で
お馴染みの方です)かと思しき男性がおられた。もしも本人であるならば、
恐らく今回のツアー全ての会場に現れ、いずれレヴューを書かれるのかも
しれない。知らないけど。


19時過ぎ。開演時刻は過ぎているが、まだディランは現れない。
会場内少しずつ熱気が高まっている。焦らしているのかな?


そして唐突に音が弾け、音楽が始まった。


ディラン、現る。


曲目が解らない。どうも最近の曲からスタートしているみたいだ。
曲目が解らない。でもそれがどうした。ディランが、本物のディランが
僅か10m程先のステージの上でマイクに向かって口を開き始めている!!!
それだけで僕は瞬間的に気が遠くなりそうになってしまった。


ディランはオルガンを弾いている。近年のスタイルとして、あまり
ギターは弾かなくなってしまったようだ。今回のショーでギターを
弾いたのはたったの1曲のみ。しかし味のあるリードを聴かせてくれた。
結構上手いんだよね。テクニカルではないけれど、上手いんだ。
バックバンドは5人。下手に音をいじらず、恐らくは旧き良き
アメリカのブルーズやロックンロールを再現しているのではないかと
思しき音創り。いいね。


ハーモニカもたっぷり聴かせてくれた。相変わらずのヘタウマさ。
でも、ハーモニカホルダーは使用せず、マイクに取り付けたスタイルで
吹いている。


声のひどさはそりゃもうアレでして。歌ってるんだか語ってるんだか
もうよう解らん。でもね、ひとつ言わせてね。僕はそのひどさ加減が
もうこよなく好きなんですね。


ファンとしてはお馴染みのナンバーも幾つか演奏してくれたけど、
例によって(ディランは最近の曲でも昔の曲でも、ライブではアレンジを
思いっきり変えて演奏する)どれもこれも判別するのに少々時間が
掛かったりしちまったりで。それでも僕は「ああっあれかあっ!!」と
それなりに興奮状態になってしまったのですな。


僕の前にいた団塊世代とおぼしきおじさんは、どうにも解らないみたいで
退屈そうだった。おいおっさん、帰れ! 僕の斜め向かいに居た
若いお嬢さんはノリノリだったぞ。その近くのにいちゃんも。


いやいや御免。冗談ですよ。そりゃああんだけアレンジ変えられたら
訳わかんないよね。でも、僕はそんな訳のわかんない事するディランが
好きなんですね。


今回の過密とも云えるスケジュールの中で、恐らくディランは
セットリストをほぼ日替わりで変えてくるのではなかろうか。
全ての公演を観られる人はそうそういないと思うけれども、
例えば大阪公演のみを全て観るだけでも相当に楽しめそうだ。


まあ、そんなお金無いから俺は・・・


アンコールは昨日も書いたけれども以下の3曲(記憶違いあったら御免)


・Like a rolling stone

・Joey

・All along the watctower


「joey」以外は僕の予想ではあるが、毎回演奏するのではないか。
これはもうお約束だろう。代表曲中の代表曲だしね。アレンジも
そんなに変えない筈だ。その辺りはディランも心得ている筈・・・かな?


All along the watctower(見張り塔からずっと)を演奏した後、
ディランとバンドはそそくさと引き上げた。もう少しだけでも
演奏してくれとばかりに拍手は鳴り止まずではあったが。それに
公演初日と云う事もあるのかして、少々硬い感じも見受けられた
気もしないではなかった。しかしそれでも本当に素晴らしいショー
だった。これから大阪、名古屋、そして東京と忙しく廻るのだな。
その初日に居合わせた幸運。僕は本当についている。



日本でいえば古希を迎えようかとするじいさん(?)である。
声はひしゃげているし、見てくれももうアレだ。しかし、
それでもこのパワーである。恐るべし、ディラン。


終演後、会場内にあるCD売場には人が溢れていた。思わずCD
買いそうになっちまったぜ。



僕が買ったのはこのポスター。会場内に展示されていた。
買ったは良いが、ディランの目つきが怖くて部屋に貼れねぇぜ・・・・・


Zepp Osakaを出た僕は、ディランのインタヴューを載せている
ビッグイシュー誌を、社会復帰を目指すホームレスのおじさんから
買った。結構売れているみたい。昨年出したチャリティー
クリスマスアルバムについてのインタヴューだった。買ったぞ、
そのアルバム。


帰路は歩いた。風に吹かれた。3月の夜はまだ寒い。しかし途中の
酒屋で缶チューハイを買って、呑みながら歩いた。何だか、別の
世界から還って来たかの様な気がした。


How does it feel 「どんな気がする?」 って、ディランに聞かれて。

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僕にとっての今年最大のイベントが終わってしまった。


明日もいい日にしてみせますよ。ではまたね。