あの、それ、ギターですか!?

1997年・林道日本一周

1997年11月24日月曜日。
林道日本一周の旅。


ここは沖縄県。海を
渡りやって来た。
沖縄にも、林道はあるから。


さて、ここは沖縄本島北部、
国頭郡本部(もとぶ)町。
そこから大きな橋を渡って
辿り着く事が出来る小さな島。


「瀬底島」 その島からの夕景。このビーチ脇のキャンプ場が、
僕が拠点を構えた場所だった。無料で利用出来た。水しか
出ないが、シャワー室もある。ここに居る間、僕は風呂には
一度も入っていない。冷たい冷たいと言いつつも、しゅっちゅう
シャワーを利用させて貰っていたっけ。


珊瑚礁に囲まれた、正に別天地。楽園のような土地だった。
11月初旬、沖縄本島に上陸した僕は、那覇市内の安宿の主人から
教えて貰い、この島へと移動し、そして暫し居ついた。
島とは云え買出しにはおよそ苦労せず、しかも物価も安い。
食べ物は何を食べても美味しかった。沖縄っていいなあ・・・
11月初旬なのに、海水浴が出来た。蝉も鳴いていた。


その後、僕は一旦また海を渡り、石垣島へ。そこから日本最南端の
波照間島にも渡る事が出来た。諸事情から与那国島へは渡れなかったのが
今となっては少し悔やまれるが、しかしそれなりに満足してはいる。


そこからまた本島に戻り、絶対行かねばとばかりに再訪したのが「瀬底島」。
こんな居心地の良い所はそうそう無い。ちょいと環境の良いビーチは、大手の
ホテルが囲い込んでプライベートビーチに無理矢理してしまってるし、
更に本当に素晴らしいビーチは・・・・そう、米軍のもの、だ。

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再訪した瀬底島のビーチ脇のキャンプ場では何人もの愉しい旅人達と
出逢う事となった。


当時19歳。メタルバンドを組んでいたが、突然思い立って漂泊の
旅に出たS君。スクーターで名古屋から南下してたのに、その「脚」を
突如盗まれ、しかしメゲずに沖縄まで。何それ・・・


沖縄での旅を終えたら、世界一周の旅に出るというツワモノ
バックパッカーOさん。CDウォークマンで、吉田拓郎
「みんな大好き」というベストCDを聴かせて貰ったっけ。


マンガを描いているとかいう、スクーターで沖縄へと来たTさん。
相当偏屈な所があったが、手製のサーターアンダーギーを作って
食わせてくれたっけ。


この3人とは、S君の現地でのアルバイト探しに奔走した愉しい思い出がある。
その時のS君の所持金ときたら・・・よくもまあ沖縄まで辿り着いたもんだわ。

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4人で音楽の話をあれこれしたっけ。特にギターが弾けるS君と僕は、
常々「あー、ギターがあったらいいよねえ」なんて話をしてたんだ。
珊瑚礁の浜辺で、ギターを弾くのもこりゃまた乙なものさあね。


さて、そんな折、このビーチ脇のキャンプ場に新たな旅人がやって来た。


スズキのバンディットに大荷物を括り付けてひょっこりと現れた人物。
それが先日この日記にコメントをくれたmoriyan氏だったりする。
彼がキャンプ場に到着するやいなやアズ・スーン・アズで、僕は
彼に挨拶もそこそこに、こう問うた。


「あの、それ、ギターですか!?」


そう、彼はオートバイのサイドに小さな小さなギターを積んで旅を
していたのだ。そんな奴いたんだぁ・・・・・
その姿は衝撃的であった。今でもその時の有り様を
まざまざと想い返せる。S君と僕が大喜びしたのは言うまでもない。
その夜からは、更に加わった旅人O君も含め、音楽三昧となる!


とは云え、S君が弾いたのは(メタルバンド青年なのに)
スーパーマリオ」の効果音や「笑点」のテーマ曲などだったり
するし、僕が弾いて歌ったのは、「マジンガーZ」や「トム・ソーヤの冒険
などの懐かしのアニメ主題歌だったりして。なんちゅう有り様だい。
あ、S君はブランキー・ジェット・シティの曲を歌ってくれたかな?


だが、その当時ギターを始めたばかりだったmoriyan氏が教えてくれたのは、
そう、かの尾崎豊の作品群・・・


尾崎かぁ、僕は当時その作品群があんまりにもリアル過ぎて、逆に
少し避けていたきらいがあった。だからかもしれないのだが、
今だったら口が裂けても言えない畏れ多い発言を、ある時僕はしちまった。
「尾崎の歌なんてさあ、コード進行簡単だし、誰でも出来るよなあ、
尾崎なんて大した事ないや、あんなもん、あはは」と、泡盛の酔いも手伝い。


そんな僕にムッとした表情で意見してくれたmoriyan氏。当時どんな感じで
意見してくれたのかは流石に詳細まで憶えてはいないが、彼の発言から
僕は音楽、そして歌にとって、本当に大切な事は何なのかを再認識させて
貰った。moriyan氏に、その意識はおそらく無かったと思うが、しかし・・・


音楽は、テクニックだけが優れていれば、ひとの心を打つのか?
音楽は、かっこ良くあればそれだけで、ひとの心を打つのか?
音楽は、それが最新流行のものであるから、ひとの心を打つのか?


彼の意見を元に、僕は僕の中で、旅の空の下そんな事を
唐突に考えてしまった。何が、本当にひとの心を打つのか。

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南の島で焚火を囲み、泡盛の酔いに任せる日々。小さなギターを
弾き、思いついた歌詞で適当に歌ったりした。あぁ、自分の言葉で、
自分のメロディで歌なんか書けないものかしら。出来たらいいな。


よし決めた! この旅が終わったら、自分で歌を書いてみよう!
素人だから大したものは書けないだろうけど、でも兎に角
書いてみよう。もしもそれが誰か知らないひとの心を
打ったら・・・おお、そりゃあすげえぞ! よし書こう!

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25歳でした。極めて遅いスタートだ。でもそこからの数年で、
ボツにしたのも含めると、200曲位書いた筈。泡盛の酔いがきっと
消えなかった数年間。


ごくごく一部の方々のみに評価して貰い、最後はどうにか東京で
プロの前座を少しだけ勤めさせて頂けました。良い想い出ですわ。
でも、その当時からして分不相応だったと感じていたので、辞める
きっかけが掴めた時点で、綺麗さっぱり脚洗いました。それで
良かったと思います。


moriyan氏、元気かい。一時期は浮ついてた僕ではありますが、
どうやらこれからは、地味ーな介護職として、しかしその専門性を
とことんまで追求しようとして足掻いて行くのが常となりそうな
予感です。でも、またいつか音楽したいねえ。人前で歌って
みたいねえ。歌うのって、特にギター弾きながら歌うのって、
ほんっと愉しいよね。

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音楽は、テクニックだけが優れていれば、ひとの心を打つのか?
音楽は、かっこ良くあればそれだけで、ひとの心を打つのか?
音楽は、それが最新流行のものであるから、ひとの心を打つのか?


何時か、また本気で音楽やってみたい。出来るかな?
ジジイになるまでには、どうにかしたいと願っているけれど。

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最後に沖縄、瀬底島での頃の写真を。



真ん中が僕、ギターを弾くのがmoriyan氏、左で寝そべるのはO君。
昼日中から焚火と泡盛を囲むの図。後ろには僕のジェベルが。



拾い物(!)のビーチパラソル付きテーブルとブルーシートで
連泊の為のより善き環境を整備しつつある僕達。自由な日々だった。


あれから丸10年。他のみんな、今はどうして過ごしているのだろうか。

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うわー、随分長くなっちゃった。無駄に書いちゃいましたね。
昼過ぎまでに[お勉強]を終わらせたものだから、無駄に書けちゃった。
早い時間からちょいと一杯(例によって)やっちゃってるもんだから、
このクドさと長さはどうよ! どうにも視点ズレてるし。


もうここいらでやめときますか。
明日からも頑張っていきまひょか。
明日もいい日にしてみせますよ。